国土地理院の基盤地図情報で公表されている数値標高モデル(DEM)が更新されて、レーザー測量による5mメッシュDEMの範囲が山間部を含めて大幅に広がったので、いくつかの地形表現を試してみた。
試した動機は傾斜量や陰影図より地形が表現されている&赤色立体地図などの特許1)今のところ私が把握しているのは、赤色立体地図(アジア航測、特開2011-048495)、カラー標高傾斜図(国際航業、特開2007-048185)、地形起伏画像(中日本航測、特開2012-003400)。に抵触しないで気軽に使える地形表現方法を模索するってトコロです2)標高による段彩はベタすぎるので触れていません。。
地形表現とは傾斜などを使って、紙や画面といった平面上で立体的に見せる方法で、傾斜や陰影を用いる手法(新井田,2011)や赤色立体地図をはじめとする様々な方法がある。
ただし、傾斜を用いる方法は地形の凹凸はよくわかるものの尾根と谷が同じように見えてしまう問題が、陰影を用いる視方向依存3)光を当てる向きによって同じ地形でも見え方が違うの問題がある。
一方で、横山ほか(1999)の地上開度(図1)は地上のある地点で空が見える範囲(天空率のようなもの)を指標化したもので、例えば尾根では大きく谷では小さく、また急斜面でも小さくなる傾向がある。このため、傾斜量や陰影図のデメリットが緩和されているらしいので、段彩図上で重ねてみたらどうなるのかを試してみました。
前置きが長くなりましたが、基盤地図情報の航空レーザー測量によるDEMを基に、上記の傾斜量、陰影、地上開度を計算して新府城付近(山梨県韮崎市)での地形表現を試してみました。
まず、傾斜量による地形表現(図2)。地形の凹凸はよく表現されているのですが、南西側の山地だと尾根と谷の区別がつくづらくなっているところがあります。
次に、陰影による地形表現(図3)。国土地理院の20万分の1地勢図などに用いられている方法で、北西から太陽の光が当たったときの見え方に相当します。多く用いられているだけあって地形がよく見えますが、光源との方向関係によって同じ地形であっても見え方が異なる視方向依存があり、個人的にはあまり使いたく無い手法です。
最後に、地上開度による地形表現(図4)。これを見ると傾斜量の場合と同様に地形の凹凸が表現されているうえに、尾根と谷の区別も比較的よくついています。
おまけで、地上開度と傾斜量を乗算で重ねてみたもの(図5)。赤色立体地図の地形表現方法に似ている4)赤色立体地図weblogだけあって、地形がよく表現されています。モノクロで印刷するにはこの方法が良いのかもしれませんね。
ということで、GUIで基盤地図情報のXML(GML)をGDALの.Net用APIを叩いてGeoTiffに変換するツールを作ってみました。
興味のある方は、人柱用バージョンですが↓からダウンロードできるようにしてみました。
動いた・動かないなどをご連絡頂けると喜びます。
・Gml2GTiff.zip
・動作環境:64bit版Windows、GDAL(64bit版)がインストール済みであること
3/6追記: ウイルスバスターさんから警告されてしまいました。
警告に出ているようなファイルの改ざんするようなコードは書いていませんが…
参考文献
新井田 秀一(2011),傾斜量図~白黒で地形を表現する工夫~,自然科学のとびら,17(1),2-3.5)神奈川県立生命の星・地球博物館
横山 隆三・白沢 道生・菊池 祐(1999),開度による地形特徴の表示,写真測量とリモートセンシング,38(4),26-34.6)横山ほか(1999)、J-STAGE
脚注
↑1 | 今のところ私が把握しているのは、赤色立体地図(アジア航測、特開2011-048495)、カラー標高傾斜図(国際航業、特開2007-048185)、地形起伏画像(中日本航測、特開2012-003400)。 |
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↑2 | 標高による段彩はベタすぎるので触れていません。 |
↑3 | 光を当てる向きによって同じ地形でも見え方が違う |
↑4 | 赤色立体地図weblog |
↑5 | 神奈川県立生命の星・地球博物館 |
↑6 | 横山ほか(1999)、J-STAGE |